『ミステリマガジン』『SFマガジン』など各紙でホラー特集続々 怪奇幻想ライターに聞く、2025年夏のホラーブーム

『ミステリマガジン』など各紙でホラー特集

 ここ数年じわじわと盛り上がりを見せていた「ホラー」ジャンルが、2025年の夏、いよいよ本格的なブームとなっている。

 関連書籍の発売も相次いでおり、早川書房ではこの夏刊行される雑誌3誌でホラーを特集。『ミステリマガジン』2025年7月号の「ホラーミステリの最前線特集」を皮切りに、演劇雑誌『悲劇喜劇』2025年7月号の「こわい演劇特集」、『SFマガジン』2025年10月号の「ホラーSF特集(仮)」と、3つの雑誌でホラーが深掘りされる。ミステリー、演劇、SFとジャンルをまたいでホラーが語れるのは異例だ。

『このホラーがすごい!2025年版』

 また宝島社からは昨年の『このホラーがすごい!2024年版』に続き、2年連続刊行となる『このホラーがすごい!2025年版』が6月13日に発売される。1年での情報のアップデートが必要なほど、昨年度のホラー作品の充実があったということだろう。

 こうした盛り上がりについて、怪奇幻想ライターの朝宮運河氏は、「ホラー自体はそれまでも安定した人気がありましたが、ここにきて“それまでホラー小説を読まなかった層”にも届くようになった。このブームを語るうえで欠かせないのが背筋さんの『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)でしょう」と語る。

 同作はWeb小説投稿サイト『カクヨム』に投稿されたもので、無名の新人作家による小説ながら、発行部数は35万部超という異例のヒットを記録。8月8日からは同作を原作とした映画が全国公開される予定だ。

背筋『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)

 同作の特徴は、フィクションを実録風に語る「モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)」の手法を採っている点。消息を絶った雑誌編集者の行方を辿る「背筋」を名乗るライターが、過去のオカルト記事からある場所についての恐ろしい事実を目の当たりにするという小説で、連載開始から「本当にある場所なのでは」「もしかすると事実なのではないか」と話題を呼び、ホラー小説に触れたことのなかった層にまで波及した。

「モキュメンタリー小説自体はこれまでもありました。たとえば、2012年に刊行された小野不由美さんの『残穢』(新潮文庫)は、小野さんと思われる作家自身が身の回りの出来事を調査していくノンフィクションの筆致で書かれた作品で、これが本当に怖かった。そこから約10年後に書かれたのが『近畿地方のある場所について』で、背筋さんは、その魅力をより広い層に伝えた存在といえます」(朝宮氏)

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