「東大京大で1番読まれた本」は本当におもしろいのか? 『論理的思考とは何か』が学生に読まれるワケ

「東大京大で読まれています」
こんなキャッチコピーの帯に引きつけられ、本を手に取ったことが誰しもあるだろう。
渡邉雅子『論理的思考とは何か』(岩波新書)の売れ行きが好調だ。「論理的」であるとはどういうことか。そんな思考法について書かれたこの本は、2025年6月現在で5万部を突破。そして5月の東大駒場書籍部・新書部門では1位となった。東大京大で読まれた本は、世間でも話題になりやすい。本書はなぜ学生に人気なのか。

まずは、どういった本が学生に読まれてきたかを振り返ろう。最も有名な本が外山滋比古『思考の整理学』(ちくま文庫)だ。これは2008年に東大・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得した思考法の入門書で、以来歴代トップの売上数を誇る。
近年では、國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮文庫)が2022〜23年と2年連続「東大・京大で1番読まれた本」となった。ヒトの言語習得を扱った今井むつみ、秋田喜美『言語の本質ーーことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書)も根強い人気がある。2023年に東大、京大、早慶の新書部門で数ヶ月売上1位を記録する。
2024年には阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社)が、東大・京大をはじめ全国の大学生協の書店で年間1位(人文書)となった。ほかにも、劉慈欣『三体』(ハヤカワ文庫SF)に「東大で一番読まれた本」の帯が巻かれたことも。こういった話題小説もよく読まれるが、千葉雅也『センスの哲学』(文藝春秋)も東大京大で月間1位を獲得しており、哲学ジャンルの強さがうかがえる。
さて、『論理的思考とは何か』はなぜ学生に選ばれているのか。本書もまた、思考法の本。これまでの売れ筋にも合致している。しかし、理由はそれだけではない気もする。