リアルサウンド連載「From Editors」第103回:新幹線でしか味わえない“駅弁文学”
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
『トランヴェール』が読めると思っていたら
新幹線に乗ってひと段落ついたらみなさんは何をしますか? 私は席に置いてある『トランヴェール』を読むのが新幹線で過ごす際のルーティンだったりします。自分の前の席の座席ポケットに入っている持ち帰りもできる冊子で、出張が多い方、帰省される方など新幹線によく乗る方々にはお馴染みかもしれません。
各地の名所や文化、行事などにふれられる一捻りある特集や柚月裕子さんの連載コラムなどとても丁寧につくられていますが、なかでも私のお気に入りは表紙をめくってすぐ目に入ってくる「EKIBENギャラリー」。その名のとおり全国各地の駅弁を紹介するコラムです。ドンとレイアウトされた写真の絵力もさることながら、なにより“読ませる”文章に惹きつけられます。駅弁を手にとった際の見た目、蓋を開けた後の印象、主菜に関する情報や味はもちろん、副菜がどんな役割を果たしているか……といったようなことが、ウィットに富んだ言葉や表現で綴られています。親しみやすさでいえば、『孤独のグルメ』のゴローの心の声にも近い感覚があるような? 型にはまっておらず、しかし気を衒うことなく読みやすい。コンパクトな文量ながら駅弁自体の魅力を伝えつつ、その伝統を守る作り手への眼差しも透けて見えるーーそんな印象を持つ素敵なテキストなのです。いま手元に冊子がなく例を紹介できないのが残念ですが、読んでいただけたら言わんとすることは感じていただけると思います。
なぜこんな話をし始めたのかというと、先日京都に行く機会があったので移動中に読めるかと思っていたら、『トランヴェール』はJR東日本が発行しているため、東海道・山陽新幹線には置いていないということに車内で気づきガッカリしたからでした。東北〜北陸方面に新幹線で行かれる際にはぜひ手にとってみては(定期購読もある模様。特集はeBookでも読めます)。
ちなみに、初めてこの「EKIBENギャラリー」を読んだとき、著者の真岡ひであきさんという方の他の書きものを調べてみたのですが、Web上では情報を見つけることができず。他にどんな文章を書かれていらっしゃるのか、気になります。
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