あいみょん、強い想いが導いた『ドルフィン・アパート』の大成功 過去最長ツアー、ファイナル公演を振り返る

あいみょん『ドルアパ』最終公演レポ

 ライブ終盤のハイライトは、ツアー本編と追加公演で共通のセットリストだった「君はロックを聴かない」から「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」への流れ。「君はロックを聴かない」でオーディエンスが大合唱を聴かせると、「RING DING」ではあいみょんがステージからフロアに降りて、オーディエンスとハイタッチをしながら歌い、そのままの勢いで「夢追いベンガル」に突入すると花道のセンターが競り上がって、無数のタオルが振られるなかで圧巻のパフォーマンスを披露。さらにステージに戻って畳み掛けられた「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」で会場の盛り上がりは沸点に達し、この曲でのあいみょんは何度見てもロックスターのよう。このままエンディングでもよさそうなものだが、「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」のあとにツアー本編では「ざらめ」、追加公演では「生きていたんだよな」を歌い、ディープな表現をシリアスに聴かせたのは、シンガーソングライターとしての矜持を強く感じさせるものでもあった。

あいみょん(撮影=永峰拓也)

 もともとデビュー当時のあいみょんは曲を作ることに比べて、ライブに対してはそこまで積極的ではなかった印象が個人的にはある。それはシンガーソングライターであるがゆえのバンドに対するコンプレックスも少なからずあり、信頼のおけるサポートメンバーとの出会いがそのコンプレックスを払拭させたわけだが、さらにもうひとつのターニングポイントがやはりコロナ禍だったのだろう。人が集まることが禁じられた2020年、誰もが配信ライブに活路を見出そうとしていた時期、日比谷公園大音楽堂で開催した無観客ライブにおいて、あいみょんはなんとも言えない悲しそうな表情で歌い、「これが最初で最後」とはっきり口にしたことは今でもよく覚えている。あの経験があったからこそ、コミュニケーションの場としてのライブはあいみょんの活動のなかでより重要なものとなり、シンガーとして、パフォーマーとして、この5年間で成長を続けてきて、その真価が遺憾なく発揮されたのが、今回の過去最長となるロングツアーだったのだと思う。ラストナンバーは〈また会おうな まだただいま/言える場所はとっておくぜ〉と歌う「葵」。「この大切な場所を絶対に失いたくない」という強い想いこそが、『ドルフィン・アパート』を大成功に導いたのだ。

あいみょん(撮影=永峰拓也)

 途中のMCでもちらっと言っていたが、あいみょんは来年がメジャーデビュー10周年。インディーズ時代の人気曲である「どうせ死ぬなら」で始まって、「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」から、メジャーデビュー曲の「生きていたんだよな」でクライマックスを迎えるセットリストは、“死生観”という言葉がキーワードになっていたデビュー時期を思い出させるものでもあった。

 その筆致や歌唱には10年のなかで徐々に変化がありながらも、その時の自分が作りたい音楽を作るという軸の部分はブレることなく、ライブアーティストとして充実期を迎えた30歳のあいみょん。10周年イヤーにまたどんな光景を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。

あいみょん(撮影=永峰拓也)

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