アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(5)歴史を動かした“金字塔”『ネギま!』OP「ハッピー☆マテリアル」の真価を問う

「ハッピー☆マテリアル」が示したアニソンの可能性

 この作品が現在までに及ぼした直接的な影響は、出演していた声優の成長にも繋がる。すでにスターチャイルド(~2016年)の人気アーティストだった堀江由衣などを起用しつつ、青二プロダクションのホープだった神田朱未、野中藍、白石涼子(3人は声優ユニット・DROPSのメンバーでもあった)らを抜擢。小林ゆうはこの作品をきっかけに注目を集めていったし、能登麻美子、皆川純子、松岡由貴、桑谷夏子などといった、今から考えると錚々たるメンバーも出演していた。

佐藤利奈、神田朱未、野中藍、小林ゆう 「1000%SPARKING!」 | ネギま!? | オープニング

 堀江が中心となって結成された声優ユニット·Aice⁵には木村まどかが参加しているが、そのきっかけとなったのもこの作品である。また、浅倉杏美(当時は山本杏美)のようにこの作品の数年後にブレイクしたケースもある。

 さらに、現在のアニソンシーンに与えた影響としては、キャラクターソングを軸にしたコンテンツの確立も挙げられる。

 スマートフォン用のソーシャルゲームが登場して以来、『アイドルマスター』、『ラブライブ!』、『ウマ娘』など、シリーズを通して何十人ものキャラクターが登場するコンテンツは珍しくなくなった。キャラクターそれぞれのキャラソンがあるという作品も、今では当たり前である。

 現在は何十人ものキャラクターに個別のストーリーがあって、メディアミックスによって掘り下げられていき、YouTubeなどでの生配信番組によって出演声優の活躍の場も与えられている。なかにはライブパフォーマンスなどの素質を持つ者も増え、声優の地位もこの20年間で格段に向上。アニメの作画もさらに進化を続けており、安定したクオリティのものが届けられるようになった。

 まだメディアとしての制約が多かった2005年ではできなかったことが、現在ではより洗練された形で楽曲のアプローチなどが実現可能になっている。ただ、そのずっと前に「ハッピー☆マテリアル」という先駆的な楽曲が存在していたことを忘れてはならない。

 『ネギま!』放送時のリアルタイム世代以外の層にも「ハッピー☆マテリアル」は歌い継がれており、アニソンイベント『Animelo Summer Live』などでも何度もカバーされている。この曲のキャッチーな魅力は、時代を超え、作品を離れてもなお長く愛され続けているのだ。

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