アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(5)歴史を動かした“金字塔”『ネギま!』OP「ハッピー☆マテリアル」の真価を問う

 TVアニメ『魔法先生ネギま!』(以下、『ネギま!』)のOPテーマ「ハッピー☆マテリアル」が誕生してから20年。ある意味でアニソン界に革命を起こしたとも言えるこの作品は、どのようにしてヒットしたのか。その過程は、おそらく現在からすると想像しづらいものでありながらも、2005年のアニソンシーンを語る本連載でも外すことができないものと言えるだろう。今とはまったく異なる2005年という時代の状況を振り返りつつ、「ハッピー☆マテリアル」という作品が現代へ与えた影響について考察する。

アニソン界の革命児——『ハッピー☆マテリアル』誕生の背景

 『魔法先生ネギま!』は『週刊少年マガジン』(講談社)で2003〜2012年に連載された赤松健によるコミック。前作『ラブひな』に続いてアニメ化され、2005年1〜6月に放送された。そのOPテーマ「ハッピー☆マテリアル」は、“麻帆良学園中等部2-A”が歌唱している。これは本作のヒロインである麻帆良学園の生徒たち総勢31名によるもので、OPテーマは月替わりで5~6人のメンバーが歌うという方式だった(最終話は全員歌唱)。

 そもそも『ネギま!』は31名のヒロインという“物量”が大きな特徴の作品だった。従来のアニメでもヒロインが多数登場するものはあったが、多くても10人程度が常だった。“12人の妹たち”がヒロインとなるというインパクトによって既存の価値観を打ち破るラディカルな作品となった『シスター・プリンセス』は、後のアニメにも大きな影響を与えたが、物量という意味では『ネギま!』はそれを大きく上回っている。

「Asinus in cathedra」 | 魔法先生ネギま! | 第1話公開 【期間限定】

 31人もヒロインがいれば、視聴者の好みの女の子が見つかる可能性は高い。そのぶん、作品内でキャラクターを個別でフォーカスするような描写は少なくなってしまうが、それを補っていたのが“キャラクターソング”だった。

 本作ではアニメが放送される1年前の2004年から『声のクラスメイトシリーズ』として、キャラクターソングを毎月リリース。第1弾の神楽坂明日菜のように1人のキャラクターがフィーチャーされたものもあったが、複数人のユニットで1枚の作品をリリースするケースも多かった。その中の「3月:文化部4人組」がオリコン週間シングルランキング5位(※1)を記録するなど、当時のキャクターソングとしては異例のヒットを記録することになる。

 「ハッピー☆マテリアル」も同様に各月のOPがリリースされた。だからこそ、アニメの主題歌というよりもキャラクターソングとしての色彩が強いものになり得たのだった。

音楽的観点から見た楽曲の魅力

 「ハッピー☆マテリアル」の音楽的な魅力を端的に表現するならば、異常なまでのスピード感とテンションの高さだと言えるだろう。まず、曲が始まって5秒でいきなりサビというスピード感は強い印象を与えている。歌詞も冒頭の〈光る風を追い越したら/君にきっと逢えるね〉というフレーズに表れているように、とにかく前向きでキラキラした物語の始まりを予感させるものだ。

 そこで畳み掛けるのが、サビの〈カラフル☆ハッピー☆マテリアルGO!!〉というフレーズである。言葉の意味はわからないが、とにかくすごい勢いなのだ。アニメではこのサビの部分で、主人公のネギ・スプリングフィールドが31人の生徒とキスをする(もちろん実際にするわけではない)という演出がなされている。まさにハッピーなマテリアルが脳内にドバドバ出てくるような魅惑的な楽曲なのである。

麻帆良学園中等部2-A 「ハッピー☆マテリアル」 | 魔法先生ネギま! | オープニング

 ところが、2番になるとまた違った魅力が見えてくる。2番はバージョンごとに歌詞が異なり、キャラクターの個性を表現した歌詞となっている。掛け声やセリフなども入ってきて、まさに“キャラソン”といった内容に。1番で前向きなメッセージを発信し、2番でキャラクターの個性を表現したところが、この楽曲の特徴と言えるだろう。

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