HANA「ROSE」MVを徹底考察 「No」を「Yes」に変えて“自分”を見つけた7人による革命の狼煙

 BMSGとちゃんみなが手掛けるガールズグループオーディション『No No Girls』から誕生した7人組ガールズグループ HANA。彼女たちのデビュー曲「ROSE」のMVが4月2日に公開され、公開から1週間で900万回再生を突破するほどの反響を呼んでいる。

HANA / ROSE -Music Video-

 HANAが誕生した『No No Girls』のコンセプトは、「ずっとNoと言われてきた女の子が自らの個性と才能を開花させる」。周囲に「No」と否定されてきた者、自分で自分に「No」を突きつけてきた者たちが自分自身と向き合い、過去を乗り越え、成長していくさまがオーディションを通してリアルに届けられた。その様子は、老若男女、数知れない人々の心を動かし、芸能界にもファンを増やしている。そして、プロデューサー・ちゃんみなが心血を注いだデビュー曲「ROSE」のMVは、『No No Girls』を経て花開いた7人だからこそ、身をもって伝えられるメッセージが込められた作品に仕上がった。メンバー一人ひとりのパフォーマンスを考察しながら、HANAのこれからについて探ってみたい。

 イントロで登場して歌い出すのはJISOO。音楽を始めてからどんどん自信がなくなっていったと語っていた彼女は、韓国事務所の練習生だった期間もあり、オーディションに合格したこともあったものの、なかなか自分に納得がいかず、“自分探し”に悩んでいたという。そんな彼女が「これで上がり」というセリフが聞こえてきそうな勢いで薔薇が描かれたトランプのカードを突き出すシーンは、HANAという切り札を手に入れたJISOOが、「単身で韓国から日本に渡ってデビューする」という一か八かの賭けに勝ったことを表すようにも見て取れる。

 無機質に並んだロボットをスコープで覗くCHIKA。その視線は微動だにせず、まるで自分を締め付けていた“No”を一つひとつ打ち消していくように、標的に狙いを定めて離さない。オーディション参加当時、「自信のない感じはもうここまでだよ」とちゃんみなに言われたのを機に、めきめきと自信をつけ、その実力に見合うメンタルを備えた彼女の成長を可視化しているような、凛とした姿が印象的な場面だ。「CHIKAが歌えば間違いない」、「CHIKAならば百発百中で当ててくるだろう」とも思わせるようなシンガーとしての“仕事人感”をスナイパーを演じることでより感じさせてくれる。

 MVには衝撃的なビジュアルも多かったが、その1つが、薔薇のような棘がついたワイヤーでロボットに操られているKOHARUのシーン。KOHARUはしばらく手足を固定され、身動きが取れずにもがいていたが、1番サビでワイヤーを大きく振り切って抵抗し始め、最後には拘束が解かれて自由の身になっている。筆者はこの画から、他人から勝手に向けられる棘や、SNSなどインターネットを通じて顔も知らない誰かから人形のように“らしさ”を決めつけられることへのアンチテーゼを感じた。まさに、他人に決められる価値観ではなく自らの信念に向かって進む彼女たちの精神そのものだ。

 ちゃんみなやAwichといったフィメールラッパーを中心に、HIPHOP、J-RAPがルーツのMOMOKAは、重心の低いラップで楽曲のパンチラインを担当。ロボットに四方からスマートフォンの画面を向けられても全く動じず、最後には液晶の画面を自分のヒールで踏みつける。〈え、あいつ咲いた? いや多分死んだ〉〈このbaddestトゲは自分に刺してた〉との歌詞通り、これまでもオーディションに挑戦してきた経験のある彼女は、SNSなどで世間からの「No」の声に悩むこともあっただろう。しかし、〈baddest〉は「最高の」という意味を持つスラングでもある。つまり、MOMOKAが「ガールズグループには求められていない」と悩んでいた彼女の低音ラップは、今やHANAというグループでこそ最高に輝く武器なのだ。このシーンは、居場所を見つけて自らの道を堂々と進む、今の彼女の揺らがない強さを比喩しているようでもある。

 薄暗い研究室のような場所にとらわれ、透明なビニールが張られたケースの中で横たわるNAOKO。オーディション当初から“実力の暴力”と呼ばれているほどのスキルを持つ彼女は、そんな状況下でも感情の読めない表情で、歌詞の通り〈知られてる通り I’m dangerous〉な異色の存在感を放っている。そんなNAOKOがラストのサビ直前にビニールを破るシーンは、他人の道を見えない凶器で勝手に遮る世間への反骨心のメタファーだろうか。それは、彼女自身が殻を大きく破って出てきた瞬間のようにも捉えられる。モンスターレベルの逸材が世に放たれるという衝撃をも感じさせるシーンだ。

 現代風の着物姿で部屋に佇む1人の影。美しい黒髪には花柄の染色を施し、刀を携えたYURIのシーンは、今回のMVで特に“日本”を象徴している。片眉を上げるその表情は、オーディション時から「表情が一定」と指摘されていたとは思えないほどの凄みを感じさせる。そんなYURIは、各メンバーのパートで登場し、彼女たちを身勝手に操ったり妨げたりしていたロボットと対峙して、刀を振ってみせる。今回のMVに込められたHANAの意思――「No」を跳ね返す強さと美学を、あらためて垣間見ることができるような演出だ。

 ほか6人のシーンと一線を画していたのが、最年少・MAHINAのパート。カラフルな衣装を身にまとい、机の下に爆弾を仕掛けたり、子虎のように無邪気に噛みつくような素振りをしてみたりと、1人だけ笑顔をもみられる天真爛漫な表情が映し出される。最終的に自分が仕掛けた爆弾が爆発する寸前にJISOOに部屋から連れ出される可愛らしい一面も見られる。あくまでも憶測だが、自らが突きつけられてきた「No」に立ち向かう6人とは別に、純粋にこんな状況でも楽しむことができるMAHINAがいるからこそ、HANAが「No」を払拭した先で心から音楽を楽しむグループになり得ているのかもしれない。

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