孤独と不安、そして“たったひとりの君”と向き合い続ける――seizaが『真昼の月』で結実させた美しさ

シンガーソングライター、そしてボカロPのseizaが3rdシングル『真昼の月』をリリースした。
テレビアニメ『最強の王様、二度目の人生は何をする?』(フジテレビ系)のエンディングテーマである本作は、seizaにとって初のアニメタイアップ。先んじて4月にデジタル配信されており、すでにアニメ視聴者のあいだでは「本当にいいメロディ」「何度でも聴きたくなる」と話題になっている。このリリースを機に、シンガーソングライターとしてのseizaにより大きな注目が集まりそうだ。
seizaは、2022年1月にボカロPとしてデビュー。3作目の「プラネテス」がニコニコ動画で殿堂入りし、同年には『ボカコレ』初参加ながらルーキーランキングで4位を獲得するなど、早くからシーンで話題を呼んでいた。2023年には同曲のセルフカバーをリリースし、自身の歌声を披露。このカバーはストリーミング総再生回数100万回を超えるというニューカマーとしては異例のヒットを記録し、ボカロ界のみならず、J-POPシーンのニューカマーとしても注目を集めた。ボカロシーンではすでに一定の知名度を誇るが、今後はJ-POPシーンでのさらなるブレイクが期待されるアーティストでもある。
そんなseizaの最大の魅力は、独創的な作詞センスと言えるだろう。たとえば、メジャーデビュー曲「星間漂流」は、〈この広い銀河の暗闇〉というフレーズから始まる。壮大だがどこか孤独感のあるこの一節から、〈周回軌道で巡り合うのが/あなたでよかった〉と天文用語と絡めて〈あなた〉との出会いを歌う。〈砂漠に揺れる一輪の薔薇があなたなら〉といったロマンチックな表現も特徴的だ。面白いのは、アーティスト名が“セイザ”である点にも表れているように、全作品に宇宙や天体に関連するモチーフが表れていること。歌詞に〈星〉〈銀河〉〈星間飛行〉〈宇宙船〉といった言葉が散りばめられており、そうした壮大な世界観があるからこそ〈あなた〉や〈君〉といった存在の尊さが増すような作りになっている。
また、多くのボカロP出身アーティストに共通する難解なメロディではなく、一曲を通して自然で優しく、とにかく聴きやすいメロディが印象深い。「プラネテス」がその代表例だろう。丁寧かつ細やかに紡がれたA〜Bメロから、サビで感情の起伏が演じられるまで、一筆書きのように流れていくメロディが心地よく、何度も繰り返し聴きたくなるような魅力がある。突飛なフレージングでリスナーの耳を惹きつけるのではなく、聴き手の心にそっと寄り添うようなメロディを紡ぐアーティストだ。