サザンオールスターズ、『THANK YOU SO MUCH』で未来につなぐバトン “今”を歌い続けた先に拓ける新しい物語
デビュー当時、早口すぎる歌い回しや日本語英語の混ざり合いが破天荒だと揶揄されることも少なくなかったのに、どういうわけかそれが桑田自身を離れて他人の人生に寄生した。ここ数年のサザン楽曲に宿るまなざしは、その奇跡を、その不思議を、もう少し自覚的に我が手に引き寄せることができるのではないかというものだったと思える。能登半島地震から丸1年経った1月1日に配信公開された「桜、ひらり」、日本の放送史が100年を迎える記念曲となった「神様からの贈り物」、甘い誘いで犯罪に手を染めてしまう若者たちへの警告を込めた「ごめんね母さん」、世界の環境問題を憂いた「史上最恐のモンスター」など、桑田が楽曲に込めた物語は、これまで以上に明確だ。
そんな中でも、アルバム収録曲「夢の宇宙旅行」は、ラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM)での公開直後から「名曲!」と噂されていた。歌詞に描かれたイギー・ポップなど今も活躍するタレントの名前、ベッドルームで宇宙を夢見る少年の頭の中とこの世の中を「Relay」して、世界をちょっとだけ違う景色に見せるイマジネーションは、サザン=桑田佳祐の真骨頂であり新境地でもあると思った。
この音楽で世界を救おう、なんて言わない。でも、ちょっとだけマシな世界にバトンをつなぎたい。これから先を担うのは君たちだよ。
だからこそ、サザンが『THANK YOU SO MUCH』で示した「今」は、僕たち自身にとっての「今」として、聴く者をこんなにもドキドキさせるのだろう。
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